2022年 小児感染症学会参加報告

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発熱外来のお知らせ

2022/11/9

2022年 小児感染症学会参加報告

去る11月5日は臨時休診にてご迷惑をおかけしました。
コロナ禍で参加できていなかった学術集会に3年ぶりに参加して参りました。コロナ禍の前は、あらゆる微生物に関する報告がされていましたが、コロナ禍を経て半分以上がcovid-19関連の報告でした。普段より時事刻々変化しているcovid-19情報をupdateし、日々診療にあたっておりますが、今回学会に参加してみて“まだ正式データになっていないが、今後論文発表になる貴重なデータの報告”が多くあったため、自らの備忘録含めとしても患者さま皆様にも共有させて頂きます。
①covid-19の臨床像の疫学
第5波→第6波→第7波になるにつれて小児covid-19入院例の割合が増えている。またその内訳としても低年齢化している。オミクロン株は感染力が強く軽症患者数が多い一方で、小児入院(中等症→重症)例は増えている。米国の報告ではデルタ株と比較しても、オミクロン株での入院は4倍にもなると報告されている。入院となる症例は基礎疾患がある患者が30-50%程度に及び報告が多かった。言い換えると入院例の半分以上は基礎疾患のない児と言える。また年齢が低いほど入院する症例が増えてきている。オミクロン株流行前は基礎疾患のある小児3例の死亡だけだったのに対し、オミクロン株流行後の20歳以下の死亡例は脳症や心筋炎など41例と報告されている(2022年9月現在)驚いたことに41例中19例(約50%)は基礎疾患のない児であったということ。
②covid-19臨床像
オミクロン株は発熱、嘔吐、けいれん症状を呈することが多い。また従来あまりなかったクループ症状を呈することも多い。
③小児のコロナ罹患後症状(≒後遺症)
12歳前後の女児で多い。味覚障害を呈する人は少なくなっている一方で、倦怠感や頭痛を始めとして多彩な症状により登校できなくなる方が一定数いる。
③新型コロナワクチンの効果
各施設ごとの報告にはなるが、年齢別ワクチン接種率と入院症例の年齢別ワクチン接種率を比較すると、入院症例では明らかにワクチン接種率が低かった。現在全国的な集計されたデータはまだなく個々の施設のデータしかないが、新型コロナワクチンの有効性はありそうというのが複数施設の発表者医師の訴えであった。小児死亡症例の91%はワクチン未接種だったとのこと。
 ワクチン接種によってコロナ罹患後症状(後遺症)を軽減するかどうかはあきらかにはなっていなかった。罹患自体を減らせれば、必然的に後遺症リスクは減るであろうという提言。。
 以上も踏まえ、小児に対するワクチン接種に関して、小児科学会の提言が「小児コロナワクチンは意義がある」→「小児コロナワクチンは推奨します」に変更された。
ちなみに、、、
・5-11歳のオミクロン対応ワクチンがもう間も無く承認予定。
・生後6ヶ月-4歳のワクチン
治験の段階で70%の効果がありそう。心筋炎等のリスクは10代よりも低そう。一方で、導入に至っている国はまだ米国、カナダ等にとどまっており(他国も否定的知見というよりは承認に向け準備中)データが乏しいのが現状。しかしオミクロン流行による低年齢児での重症化増加という背景も加味すると、メリット>デメリットといえる。
④新型コロナウイルスに対する治療
軽症covid-19と診断され自宅療養する場合、小児ではcovid-19治療薬適応はかなり限定的で基本的には現段階でも対症療法とするしかない。
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[ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッド®︎)]
成人では第1選択。内服薬。
12歳以上、40kg以上で重症化リスクはあるが軽症な児が適応。併用注意・禁忌薬が多いため投与に注意が必要。併用注意・禁忌薬を休薬し、パキロビッド終了後3日後再開可能な場合は投与可。
[レムデシベル(べクルリー静注薬®︎)]
小児では第1選択。重症化リスクのある生後1ヶ月〜の児で適応。基本入院の上3-10日間。
[カシリビマブ/イムデビマブ(ロナリーブ静注薬 ®︎)]
[ソトロビマブ(ゼビュディ静注薬 ®︎)]
共にモノクロナール中和抗体薬
12歳以上、40kg以上で重症化リスクはあるが軽症な児が適応。しかしオミクロン株BA.5には有効性が低下しているため、最近はあまり選択されない。
[モルヌピラビル(ラゲブリオ®︎)]
小児適応なし。
有効性の観点から成人でパキロビッドが使えない場合に選択するという位置付け。
[デキサメタゾン]
成人・小児共に重症症例で選択する。
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