学童期(11-12歳)の3種混合ワクチンについて

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2019/5/20

学童期(11-12歳)の3種混合ワクチンについて

新年度になり2種混合ワクチン(以下DTワクチン)接種に来られるお子さまが多くなっております。5-6歳・11-12歳に、実は3種混合ワクチン(以下DPTワクチン)の追加接種が勧められているのはご存知ですか?

2018年8月に日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールが改定となりました。その改定の最大のポイントは、①就学前(5-6歳)のDPTワクチン・不活化ポリオワクチンの追加接種、②学童期(11-12歳)のDPTワクチンの追加接種の2点です。今回はこのDPTワクチンについてお話しさせていただきます。

そもそもDTワクチンとDPTワクチンの違いですが、「P:pertussis」の百日咳の抗体が含まれているかどうかです。

では、なぜ百日咳の抗体がが必要なのでしょうか?多くの人は0歳時に3種混合ワクチン(現在は4種混合ワクチン)を3回接種し、1歳時に追加接種し、合計4回接種をされております。その効果もあり、1歳台の抗体保有率は90%を超えております。今まではこの抗体保有は大人になるまで保持されるとされていましたが、4回のワクチン接種終了後は年毎に抗体保有率は減少し、5-6歳では30%以下になっていることが最近の研究で分かってきています。 その後、5歳以降は再び抗体保有率が上昇していますが、これは自然感染によるものと考えられています。実際、日本における年齢別の報告数を見てみると、おおよそ6-14歳の方で多くなっています↓

近年、百日咳診断し精度の高い検査が開発され、現在は保険収載もされたため、以前より百日咳の診断は容易になってきました。しかし症状が特徴的な乳児の百日咳患者とは違い、学童期・成人期の百日咳は普通の感冒症状と大差はないため、診断が困難であるため、‟長引く風邪“と判断されていることが多いのです。6-14歳の子たちで流行してしまうと、小中学校での集団感染が起こり、しばしば地域的な流行が起こすとされています。地域の流行により、ワクチン未接種の乳児に感染してしまった場合命に関わってしまうことこそが問題なのです。例えば、現在11歳-12のお子さんが将来結婚しあかちゃんが産まれたちょうどその時に地域で流行していたら、、、パパ・ママとなったお子さんが感染してしまうかもしれず、さらには自身の赤ちゃんも感染し、大変な事態になるかもしれないのです。

実際、多くの先進国ではすでに百日咳含有ワクチンの接種が就学前・学童期に組み込まれています。(下記のスケジュールは米国のスケジュールです)

以上、日本での百日咳発生報告やワクチンの世界標準を考えると、11-12歳ではDTワクチンではなくDPTワクチンのほうが良いとされています。しかし日本の行政制度はその世界標準にはまだ追いついておらず、現在は7歳半以上の子は3種混合ワクチンは定期接種では接種できないため、DPTワクチンをご希望の場合は任意接種(自費)となってしまうのが、デメリットとなっています。

もしDTワクチンを接種した場合、基本的には追加のDPTワクチンは接種できません。これを機会に一度ご家族で相談し、DTワクチンではなく、DPTワクチンを接種するのはいかがでしょうか?

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