就学前(5-6歳)の3種混合ワクチン・不活化ポリオワクチンについて

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2019/5/27

就学前(5-6歳)の3種混合ワクチン・不活化ポリオワクチンについて

2018年8月に日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールが改定となりました。その改定の最大のポイントは、①就学前(5-6歳)の3種混合(DPT)ワクチン・不活化ポリオワクチン(IPV)の追加接種、②学童期(11-12歳)のDPTワクチンの追加接種の2点です。今回は①に関してご説明いたします。

①3種混合(DPT)ワクチンに関して

2000年代以降、百日咳患者の増加が世界的に問題となっています。百日咳に対する抗体(免疫)が含まれる予防接種として、多くの人は0歳時に3種混合ワクチン(現在は4種混合ワクチン)を3回接種し、1歳時に追加接種し、合計4回接種をされております。その効果もあり、1歳台の抗体保有率は90%を超えております。従来この抗体保有は大人になるまで保持されるとされてきましたが、4回のワクチン接種終了後抗体保有率は減少し、5-6歳では30%以下になっていることが最近の研究で分かってきています。

その後、5歳以降は再び抗体保有率が上昇していますが、これは自然感染によるものと考えられています。実際、日本における年齢別の報告数を見てみると、おおよそ6-14歳の人で多くなっています。

 近年、百日咳診断し精度の高い検査が開発され、現在は保険収載もされたため、以前より百日咳の診断は容易になってきました。しかし症状が特徴的な乳児の百日咳患者とは違い、学童期・成人期の百日咳は普通の感冒症状と大差はないため、診断が困難であるため、‟長引く風邪“と判断されていることが多いのです。6-14歳の子たちで流行してしまうと、重症化してしまう人は少ないものの小中学校での集団感染が起こり、しばしば地域的な流行が起こすとされています。地域の流行により、ワクチン未接種の乳児に感染してしまった場合、命に関わってしまうこともあることこそが一番の問題なのです。例えば、現在5-6歳のお子さんが将来結婚しあかちゃんが産まれたちょうどその時に地域で流行していたら、パパ・ママとなったお子さんが感染してしまうかもしれず、さらには自身の赤ちゃんも感染し、大変な事態になるかもしれないのです。

実際、多くの先進国ではすでに百日咳含有ワクチンの接種が就学前・学童期に組み込まれています。(下記のスケジュールは米国のスケジュールです)

以上、日本での百日咳発生報告やワクチンの世界標準を考えると、DPTワクチンを追加接種したほうが良いとされています。しかし日本の行政制度はその世界標準にはまだ追いついておらず、現在は3種混合ワクチンの追加接種は定期接種として接種できないため、DPTワクチンをご希望の場合は任意接種(自費)となってしまうのが、デメリットとなっています。(当院では¥2500です)これを機会に一度ご家族で相談し、DPTワクチンを接種するのはいかがでしょうか?

 

②不活化ポリオワクチンについて

ポリオウイルスとは、急性灰白髄炎の原因となるウイルスで、重症な場合、手足の麻痺などの後遺症を引き起こすウイルスです。現在、ワクチンの開発により世界的にポリオ発生報告数は大幅に減少しています。

日本では従来「経口生ポリオワクチン(OPV)」が流通しておりましたが、2012年に安全性の高い「不活化ポリオワクチンIPV」に切り替わり、現在は4種混合ワクチン(DPT-IPV)に含まれ、多くの方がtotal4回のIPVを接種されています。不活化ポリオワクチンは、経口生ポリオワクチンよりも抗体保持が低い可能性がある不活化ポリオワクチンで接種を勧める場合、幼児期での追加接種のほうが長期的に抗体保持されやすいとされているため、幼児期での追加接種を日本でも勧められました。すでに多くの国で4歳以降の追加接種は導入されており、世界標準に合わせた形でスケジュール改定となっております。近年のポリオの自然発生報告はアフガニスタン・パキスタン・ナイジェリアで報告されているのみで、日本での報告はありません。しかし海外から持ち込まれる可能性はゼロではありません。日本の感染症発生動向から考えると現時点で接種すべき他のワクチン(MR2期ワクチン・おたふくワクチン・3種混合ワクチンなど)を接種する方が優先されますが、そのうえでポリオウイルスの海外からの持ち込みリスクを考え、IPVの追加接種のご検討をしてみてはいかがでしょうか。

尚、①②を両方ご希望の場合、「4種混合ワクチン(DPT-IPV)を接種してはだめですか?」という質問をいただきます。現在、日本では4種混合ワクチンは製剤規定として4回までの接種とされています。そのため、3種混合ワクチン+不活化ポリオワクチンを2本での接種をお願いいたします。

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